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ζStoryζ 『漆黒の夜に赤く染まりし月が輝くとき 黒き翼が地に舞い降り立つ…』 「ぅ…そ、こんなの、魔法なんて…それも悪魔召喚の魔法なんて、(御伽噺)だと思ってたのに…」 頭上に舞い散る黒い羽根の先を視線に、あどけなさの残る少年は後方に身を退いた。 つい先刻、図書庫に埋もれていた古びた怪しげな本を発見した彼は、興味本位で 其処に記されていた言の葉を読み上げてみただけだったのだが………。 『我を呼びしは汝か…?』 少年の視線の先―宙に立つ青年の冷たい問いかけに、少年は身を震わせる。 無理もない。 その大きな瞳に映る影は、明らか"人間"とはかけ離れた姿をしていたのだから。 -尖った耳に黒き翼…そして、魔の象徴たる角…- 正に、絵に描いたような悪魔そのものの外見だ。 『して…汝。我を呼び醒ましたのは 何故(なにゆえ)か?』 「え、なんでって………」 二度目の問いかけに我に返った少年は、悪魔の言葉を遮って罰が悪そうに呟いた。 「なんでって、ただ こんなモンが埋もれてたから、面白いものみたさ…遊び半分でやって みただけなんだけど…。」 『ハ?』 「ぃゃだからさぁ、アンタつかって誰かを呪い殺したりとか そういうのしたくってやったんじゃないんだって。ほんと、マジで出てくるとか思ってなかったし…」 「はぁぁ、どーしよぉコレ。ほんとオカルト系って遊び半分でやるもんじゃないねぇ。 しかも戻し方も分からないし、あ〜ぁ〜…」 落胆し肩を落とす少年。先程までの動揺っぷりは何処へ行ったのやら。 深いため息を吐いた所で、紳士的な声色と打って変わった、投げやりな声が再び頭上から聞こえてきた。 『つぅか 「遊び半分」とかマジチョーしらけるんだけどー。』 「は?(え、ちょ、なんか口調かわってない?!)」 『用無いんならイチイチ呼ぶんじゃねーよクソガキが。俺を誰だと思ってんだ 悪魔だぞ?悪の大魔王だぞ? その俺様が、「面白いみたさ」で呼び出されただぁ? じょーだんじゃねーっつーの。用ねぇならさっさと帰らせろ。』 「クソガキって!何そのすんごいムカツク態度。さっきと全然違うじゃん!この詐欺悪魔!!」 『るせぇ…。ピーピー喚いてねぇで とっとと帰らせろっつってんだよボケが』 「んなこと言われたって、『戻し方わかんない』ってさっき言ったじゃんか! 大体、悪の大魔王様ってんなら、自分で帰れるもんじゃないのかよ」 『しらねーし。』 「えええええええええええ(´д`;) なにそれぇ」 初見は気品のありそうな風貌かと思いきや、どこぞのチンピラのような豹変ぶりは何なんだ。 『だって、フツー俺ら召喚されるときって 悪の儀式とかー?呪い殺したりとかー?そーゆ召喚者の野望叶えてやって帰るもんだしー』 さらには女子高生のような伸ばし口調ときたもんだ。本当に自称するように悪の大王なのだろうか?疑問だ。 「悪の儀式も、人殺しもしないってか してたまるかぁぁ"!!!!」 『アァン? そうしたらお前、俺を帰さないつもりか』 「ああもう どうしよう…人殺しなんてしたくないし、ぅぅぅ」 いくら遊び半分で悪魔を召喚してしまったとはいえ、この厄介払いのためなんかに殺人など犯したくない。 どうしたものかと頭を抱える少年の頭上から、再び初めに聞いた紳士的な声が降りかけられた。 『………ふん、そうか。ならば仕方あるまい。汝がどうしても我を帰したくないというのなら、 その灯火消えるまで、汝の元に居てやろう。』 「ハァ?(帰したくないって、むしろ 帰ってほしいんですが)」 『ほう…?汝よく見たら、中々の代物ではないか。捕食したらば、さぞかし美味であろうなぁ。 決めたぞ。汝を我がシモベとしてやろう。望みがあれば叶えてやるぞ。』 「シモベとか 全然うれしくないし?! むしろ、召喚したボクが主になるんじゃないの?!」 『我は王だ。故に誰の下にもならぬ。』 「あぁハィそうですか」 そろそろいい加減、ツッコミを入れる気力も失せて来た。マジでこの悪魔、どうにかしなくてわ…。 『しかし、随分と惨めな住まいだな…これでは我が落ち着いて生活できぬではないか。』 「居座らなくて結構です。」 『そうはいかぬ。召喚者の野望を叶えるか、最期を見届けるまでは常に傍に憑いておらねばならないのでな』 「神様仏様、どうかコレが悪夢であってください!!!」 そんなこんなで始まってしまった、悪魔王との同居生活…。一体この先どうなることやら。 |